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編集長のメモ(雑記)

薪がタダでもらえる!?「薪市場」のサービスに迫ってみました!

「伐採した木を処分したい人」と「薪が欲しい人」をつなげるサービスご存知ですか?

こんにちは!今日もお読み頂きありがとうございます!ナオ(@PressOutdoor)です。

今回は、素敵な取り組みをされている方に、色々とお話を聞かせて頂く事ができました。

アウトドア好きの読者のみなさんと共有したいと思い、記事を書かせて頂いております。

焚火好きの方はもちろん、キャンパーさんや薪を必要としている薪ストーブユーザーやピザ窯をお持ちのお店の方に是非読んで頂き、まだこのサービスをご存知ない方と共有していただければ幸いです。

よろしくお願いいたします!

薪市場とは?

冒頭で少し触れましたが、「伐採した木を処分したい人」「薪が欲しい人」をつなげる掲示板です。

私も、キャンプなどで焚火をする際に、薪は有料で購入しています。この薪代が意外に高くつく事があり、安くで手に入る製材所をまわったり、ピザ窯用の安い業務用の薪を材木問屋に買いに行ったりと色々工夫しています。

そんな買うと高い薪ですが、なんと伐採した木をタダで引き取って欲しい方もいるのだとか・・・

捨てられて放置される木があるという事実をもっと一般の方に知って欲しい、「木は捨てずに使おう!」をミッションで始めた掲示板なのだそうです。

倒れて放置された倒木(画像は薪市場様よりお借りしています。)

庭に積み上げられた丸太の一例(画像は薪市場様よりお借りしております。)

私は、恥ずかしながら、捨てられている木や伐採した木の処分に困っている人がいることを、今ままで知る事はありませんでした。この掲示板を見つけた時も、「なぜ無料なの?」「なんで売買禁止なの?」「安い値段設定にしても売れるんじゃないの?」などの疑問が湧きました。

そこで、薪市場を運営されている、橋本さんに色々とお話を聞かせて頂きました。

伐採された木がそこら中に積み上げられている現状

大学時代にバンクーバーに留学、都市と自然との調和がとれた環境に影響を受け、東京でお店などを経営されたのちに、奥様と長野の安曇野へ移住された橋本さん。

橋本さんご一家(画像は薪市場様よりお借りしています。)

安曇野ではセルフビルドでご自宅を建てられるなど人生経験豊富で、お話を聞かせて頂くのが非常に楽しかったです。

その安曇野での暖房は薪ストーブをお使いになられていて、薪の調達で伐採された木がそこら中にあるのに、有効活用できていない問題に直面したそうです。

ナオ:この薪市場を立ち上げたきっかけを教えてください。

橋本さん:薪ストーブだけで暖をとっています。なので、薪の調達を考えるのですが、買うかもらってくるかの2択です。もちろんもらいたいのですが、そんに都合よく伐採の木にありつけません。

橋本さん:その一方で伐採された木がそこら中に積み上げられていたり(空き地など)、また高いお金を業者に払って伐採&運搬&廃棄処分を依頼する人がいます。この両者をつなげるしかないなと・・・

橋本さん:特に安曇野では今、松枯れの被害がすごく、松を伐採しまくってまして、それが積み上げられていたり、積まれもせずに放置されていたりと、景色もとても悪く、美観上も木の片付けが必要だなと思い薪市場に繋がりました。

この松枯れの問題、少し調べてみましたら詳しく書かれた記事を見つけました。(少し古い記事ですが、詳しく書かれています。)

伐採・運搬・廃棄処分の高額な費用の問題をわかりやすく図にしたものが薪市場さんのtwitterのヘッダーになっていますので、もう一度ご覧頂きたいと思います。

木を切るのに5万円かかりそれを運ぶのに10万円。さらに捨てるのに30万円かかる・・・かなり高額な金額がかかることがわかります。

他にも具体的な例を橋本さんにあげて頂きました。

ナオ:高い費用がかかった具体的なお話ってありますか?

橋本さん:4万円で赤松を20本以上切ってもらいました。ただこれを集積して運び出すと、トラックやユンボの調達、オペレーターの人件費、ガソリン代で少なく見積もって10万円はいくと思われます。(橋本さんの隣家の方は量は半分で集積するだけで見積もり費用が8万円でした。)

橋本さん:そして廃棄となると、地方地方で値段は違いますが、業者が捨ててもうちの近辺だと25円/kgです。赤松1本1t程度あったりしますので20本だと廃棄だけで50万円・・・。ただこれらは伐採の難易度や伐採ポイントと道路までの距離など、様々な条件により変わりますので、あくまでも(例)としてマイルドな数字を薪市場のトップ画像に揚げています。

橋本さん:近隣の知人が庭の2~3本を伐採・運搬・廃棄依頼をしたところ、見積もりで50万円と言われ、伐採そのものを断念した事例もあります。

他にも事例を揚げて詳しく説明してくださいました。やはり運搬や廃棄するのに高額な費用がかかることで、伐採そのものを諦めたり、適正な相場を知らずに高い費用を支払っているケースもあるそうです。

個人事業の木こりさんなら、とてもリーズナブルに伐採をしてくれる印象を持ちました。

そこで、先ほどの図のように、伐採だけ木こりさんにしてもらい、運搬と廃棄の部分を「薪が必要な人」にお願いすれば「無料」となるわけです。

薪市場のトレード実績

伐採されて行き場のない木が山積みにされている現状を知っていただいたところで、実際に薪市場でのトレードの状況についてお話を伺いました。

この薪市場の掲示板ができたのが、去年の10月末(2018.10)なので出来立てホヤホヤのプロジェクトだそうです。

ナオ:薪市場のトレードの実績は現在どれくらいですか?

橋本さん:まだ全然認知されていませんが、最近急に動きまして、兵庫(年間200本切る庭師さんが、これまで産業廃棄物として出していたものをUPしてくれています。)長野、茨城と3件動きました。どちらも引き取り済みor引き取り連絡済みです。

やはり薪の需要はあるのですね、まだ出来て間もないのに3件の実績がある事に驚きました。

今後もこの取り組みがもっと色んな人に伝わると、活発化していくのではないかと、私もワクワクしています。

この記事を書いている最中に、安曇野市の北隣の松川村で松が100t以上出たそうで、現在引き取りが始まり、薪が欲しい人が続々と出ているそうです。

すごい規模ですよね!まさに薪市場がなければ、この100tのもの木材はどうなっていたかを考えると、橋本さんの取り組みには脱帽です。今後さらに加速して行くものと思われます。

なぜ、売買禁止で無料なの?

私のように、薪が欲しい人間であれば、安く手に入るのはとても嬉しい事、無料でなくてもこの取り組みは成功するのではないか?そんな疑問も失礼ながら投げさせて頂きました。

ナオ:売買禁止にしたのはなぜですか?格安で譲るとか、販売は全然考えられていなかったのですか?

橋本さん:「重い木の片付け」と「薪の調達」が完全にトレードするなと思ったからです。あと「お金」という概念に対するささやかな抵抗です。笑
無料のものがもっとあっても良いなと。

ナオ:この部分ってすごく重要だと思うんです。私が素晴らしいなぁと思ったのが、トレードという仕組み作りもそうなのですが、無料でやっているってとこでした。どうしても利益を考えたくなるのですが、本当に素晴らしい取り組みだと思います。

橋本さん:お褒め頂きありがとうございます。全てはネットのおかげで、それほど運営費もかかりませんので(最初はチラシ代もありますが)。世の中、自分たちが恩恵を受けている無料サービスはいっぱいあります。ツイッターもそうです。なので、最悪1円にもならなくても、自分発の無料サービスをリリースすると、ギブ&テイクで心のバランスが取れるというか。笑 そんな風に思ったりします。ここからどうゆう形で発展していくか見ものです。

本当に素晴らしい取り組みだと思います。確かに色々な無料サービスを利用して便利に生きている私ですが、恥ずかしながら、自分発の無料サービスをリリースしようなんて全然考えた事もありません。利益利益と進む毎日に少し清々しい風が吹いた。そんな感じを受けました。

現状の問題点と今後の薪市場のビジョン

橋本さん自身も放置されている木材を探してどんどんUPされています。

ナオ:ご自身でも放置されている木材を探されたりもしておられるのですよね?

橋本さん:まずはうちの周りで探しています。ネットが出来ないお年寄りも多いので・・・どんどんUPしているうちに、皆さんに慣れていただこうと思っています!

橋本さん:建物がある場所なら持ち主にリーチできるのですが、空き地とかだと大量の木を見つけても声をかけられず、色々難しさはあります。

ナオ:なるほど・・・お年寄りはネット出来ませんからねぇ・・・しかし、そのようなお年寄りの方ほど、困っておられるのではないでしょうか?

橋本さん:うちの近所でもそうなんですよね。土地を持っているのは結構年配の方が多くて、でも薪ストーブも使っていないから、何年も伐採木を寝かせっぱなし・・・という方が結構います。

橋本さん:本当は家族の中の若い人なんかが片付けていかないといけないのだと思います。

ナオ:そうですね、ありがとうございます。ちょっと被ってしまいますが、今後のビジョンやPRなどあれば教えてください。

橋本さん:ビジョンとしては「ゴミ処分場に行く木をゼロに!」

橋本さん:PRは何でしょうか・・・「伐採費安くなります!薪無料になります!フリー掲示板『薪市場』」こんな感じでしょうか。何か良いPRがあれば教えてください。笑

ナオ:今回は色々お話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。このプロジェクトが多くの方に伝わり盛り上げって行くことを楽しみにしています。

ネットで便利な世の中にはなったものの、お年寄りの方々は薪市場のようなサービスをなかなか知ることが難しいのが現状。そんな課題に橋本さんは自ら行動し日本全国の放置された倒木や伐採木を撮影・無料で流通させるべく全国を回られます。そのために人生初のクラウドファンディングに挑戦されています。

是非この素晴らしい取り組みが、もっといろんな人たちの目に止まり盛り上がって、木を片付けたい人と薪が欲しい人の双方がwinwinの関係いれて、なおかつ、安曇野の松食い虫被害で伐採された木が積み上げられ、失われて行く景観に歯止めがかかる事を期待したいです。

この問題は安曇野だけでなく、日本全国色々なところで起こっていると思います。私の住んでいる大阪でも先の台風の被害により、近くの登山道ではたくさんの倒木が放置されたままになっています。

登山道をかろうじで通れるようにしているだけのところが非常に多いのが現状です。このような問題も薪市場なら前に進むことができるのではないかと思います。

この記事を読まれたキャンパーのみなさん、焚火好きのみなさん。薪ストーブを使っておられるみなさん。この素晴らしい取り組みを同じような方々と共有して、無料で薪を頂いて、優しい炎の揺らめきと暖かさを楽しんでもらえればと思います。

Outdoor Pressでも微力ながら、応援させて頂きたいと思います。今後の橋本さんと薪市場から目がはなせません。